背景は昭和30年半頃。京、室町の老舗呉服屋の一人娘、千重子は、両親の愛に見守られ幸せに暮らしています。しかし、千重子は捨て子でした。そして、祇園祭の人混みの中で自分とそっくりの女性に出会います。この女性こそ、双子の苗子です。苗子は捨てられはしませんでしたが、両親は早く死に、北山杉の奉公人として働いています。捨てられた方が、愛情いっぱい裕福なお嬢様に育っているという運命の不思議です。
お互いが生き別れた双子だと知り、まだ「身分の違い」が残っている時代ですが、お互いが最後まで、相手を気遣い優しく思いやります。
この二人の出会い、愛情と哀しみを間に描きながら、小説の中には、昔ながらの風習やお祭りが詳しく解説され、京都通になるくらい京の雑学が増えます。葵祭り、祇園祭、時代祭り、大文字焼き、鞍馬の火祭り・・・、季節のお祭りを追いながら物語は進みます。
『八月十五日の大文字は、盆の送り火である。夜、松明の火を投げ合って、虚空を冥土に帰る精霊を見送る習わしから、山に火をたくことになったのだという。東山の如意ヶ獄の大文字が「大文字」なのだけど、じつは五つの山に火がたかれる。金閣寺に近い大北山の「左大文字」 ~~~ 上嵯峨野の鳥居形、合わせて五つの送り火がともされる。その間40分ほどは、市内のネオン、広告塔も消される』 本文より
また、日常の暮らしの中に京の老舗店が盛り込まれています。帯の図柄を考えるために嵯峨の尼寺にこもっていた父親に、千重子が届ける豆腐は、「森嘉」の豆腐。ここは、今でも行列ができるほど人気の豆腐屋さん。また、牡丹湯葉とやはた巻きを買いに行ったのは、御池通りの「湯波半」です。
『比叡と北山は、その色に押されて濃い紺ひと色であった。湯葉半では、牡丹湯葉とやはた巻きが出来ていた。
「お越しやす、お嬢さん。祇園さんで、いそがしいて、ほんまの古いおなじみさんだけで、かんにんしてもろてます」 ~ やはた巻きといふのは、ちょうど、うなぎのやはた巻きのように、湯葉のなかに、ごぼうを入れて巻いてある。牡丹湯葉というのは、ひろうすに似ているが、湯葉の中にぎんなんが包み込んである』 本文より
運命に翻弄される二人の主人公が、京都ならではの歳時記の中を、見事な京絵巻物のように生きてゆくのです。
※ ビデオ・DVDで観るなら
「古都」をビデオやDVDで観るのであれば、1963年公開、岩下志麻が主演の作品が、私はおすすめです。脚本が原作とほぼ同じであり、この当時だからこその、美しい京の町並みが映像化されています。始まった途端の瓦屋根を写しただけのシーンに、思わず感動!武満徹の前衛的な音楽が、京都の陰の部分と混じりあい、雰囲気を刻々と高めてゆきます。岩下志麻も、びっくりするくらい気品があって、西陣の着物と帯の素晴らしさに見とれます。
その後、山口百恵ちゃんや、上戸彩さんなどが、姉妹を演じています。百恵ちゃんは、独特の暗さがこの作品に深みを与え、上戸彩さんは、個性的で、姉妹の優しさがにじみ出ています。どれも素晴らしい作品です。
上戸彩主演の「古都」 http://www.tv-asahi.co.jp/koto/index.html
ムービーも観られます。「古都」着物ギャラリーもありますよ。
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