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今話題のきもの書籍 【古 都 】
   
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川端康成 古都「古 都」 川端 康成著

 京都を旅したいなあ~と思っている方に、今月はぴったりの京都の観光案内の本の紹介です!と言っても、普通の情報雑誌ではありませんよ。私のおすすめは、川端康成の「古都」。「え~文学では・・・」と思われるかもしれません。

 でも、着物好きの皆さまには、すごくおすすめします。実は「古都」は、着物と京都の案内本、と言ってもいいくらい、華麗な着物や色とりどりの帯、そして、清水、平安神宮、大原、錦市場、仁和寺、北山杉・・・、京都のあらゆる名所が舞台なのです。「古都」を読んで京都を訪れると、一つ一つの素晴らしい情景の中に、主人公の鮮やかな着物姿が思い浮かび、京の旅が、ぐ~んと味わい深くなりますよ。

 京都は行ったこともない・・・という人も、古い町並みの、賑やかなだけではない、歴史の影を持つ京都を、着物でゆるりゆるりと歩いているような気分になる「古都」、おすすめです。

  内 容
   背景は昭和30年半頃。京、室町の老舗呉服屋の一人娘、千重子は、両親の愛に見守られ幸せに暮らしています。しかし、千重子は捨て子でした。そして、祇園祭の人混みの中で自分とそっくりの女性に出会います。この女性こそ、双子の苗子です。苗子は捨てられはしませんでしたが、両親は早く死に、北山杉の奉公人として働いています。捨てられた方が、愛情いっぱい裕福なお嬢様に育っているという運命の不思議です。

  お互いが生き別れた双子だと知り、まだ「身分の違い」が残っている時代ですが、お互いが最後まで、相手を気遣い優しく思いやります。
 
  この二人の出会い、愛情と哀しみを間に描きながら、小説の中には、昔ながらの風習やお祭りが詳しく解説され、京都通になるくらい京の雑学が増えます。葵祭り、祇園祭、時代祭り、大文字焼き、鞍馬の火祭り・・・、季節のお祭りを追いながら物語は進みます。

大文字送り火『八月十五日の大文字は、盆の送り火である。夜、松明の火を投げ合って、虚空を冥土に帰る精霊を見送る習わしから、山に火をたくことになったのだという。東山の如意ヶ獄の大文字が「大文字」なのだけど、じつは五つの山に火がたかれる。金閣寺に近い大北山の「左大文字」 ~~~ 上嵯峨野の鳥居形、合わせて五つの送り火がともされる。その間40分ほどは、市内のネオン、広告塔も消される』  本文より

 また、日常の暮らしの中に京の老舗店が盛り込まれています。帯の図柄を考えるために嵯峨の尼寺にこもっていた父親に、千重子が届ける豆腐は、「森嘉」の豆腐。ここは、今でも行列ができるほど人気の豆腐屋さん。また、牡丹湯葉とやはた巻きを買いに行ったのは、御池通りの「湯波半」です。

『比叡と北山は、その色に押されて濃い紺ひと色であった。湯葉半では、牡丹湯葉とやはた巻きが出来ていた。
「お越しやす、お嬢さん。祇園さんで、いそがしいて、ほんまの古いおなじみさんだけで、かんにんしてもろてます」 ~ やはた巻きといふのは、ちょうど、うなぎのやはた巻きのように、湯葉のなかに、ごぼうを入れて巻いてある。牡丹湯葉というのは、ひろうすに似ているが、湯葉の中にぎんなんが包み込んである』 本文より

運命に翻弄される二人の主人公が、京都ならではの歳時記の中を、見事な京絵巻物のように生きてゆくのです。

DVD古都※ ビデオ・DVDで観るなら
  「古都」をビデオやDVDで観るのであれば、1963年公開、岩下志麻が主演の作品が、私はおすすめです。脚本が原作とほぼ同じであり、この当時だからこその、美しい京の町並みが映像化されています。始まった途端の瓦屋根を写しただけのシーンに、思わず感動!武満徹の前衛的な音楽が、京都の陰の部分と混じりあい、雰囲気を刻々と高めてゆきます。岩下志麻も、びっくりするくらい気品があって、西陣の着物と帯の素晴らしさに見とれます。
 
  その後、山口百恵ちゃんや、上戸彩さんなどが、姉妹を演じています。百恵ちゃんは、独特の暗さがこの作品に深みを与え、上戸彩さんは、個性的で、姉妹の優しさがにじみ出ています。どれも素晴らしい作品です。
上戸彩主演の「古都」 http://www.tv-asahi.co.jp/koto/index.html
ムービーも観られます。「古都」着物ギャラリーもありますよ。

  終わりに
 

着物で読書 夏になると、本屋さんは、子どもたちのために、「夏の読書本100冊」を並べます。その中にも、「古都」を見つけました。ノーベル文学賞作家の川端康成の作品ですが、今はあまり読まれなくなった、と聞きます。しかし「山の音」「雪国」「伊豆の踊り子」などの多くの川端作品には、歳時記を読むような、四季折々の美しい風情が漂います。
 
  着物を着ても、行く所がない・・・などという方は、「着物で読書」はどうですか?自分の好きな着物を着て、ゆっくりできる涼しいカフェなどで、子どもの頃読んでも面白くなかった川端康成を読んでみると、細やかなシーンの数々に感動するかもしれません。旅をしなくても、美しい町並みの中を、着物で歩いているよう・・・。すると、どういうわけか、着物の時の美しい立ち振る舞いが、不思議、不思議、自然に身についているのです。

  素敵な着物の人の立ち振る舞いを実際に目にすることが少ない現在、着物の振る舞いを真似ることは難しいですね。着物で動き回る主人公が沢山出てくる本を読むと、着物の美しい動きがイメージ出来るようになるみたいです。ぜひこの夏は、京都へ旅行に行く人も、行かない人も、「古都」を読んで、ますます着物の美、発見してくださいね。

  今話題のきもの書籍の基本情報
 

題名:「古 都」
著者: 川端 康成
発行所: 新潮文庫
発行年月日: 1968年8月27日
価格: 420円

  執筆者
 

緒方ゆうこ

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